田中:YBCO超伝導線材を用いた配向Cu金属基板の量産体制の確立

テクスチャードCu基板は3層構造(厚さ0.1mm、幅10mm)となっている(写真:ビジネスワイヤ)

テクスチャードCu基板は3層構造(厚さ0.1mm、幅10mm)となっている(写真:ビジネスワイヤ)

東京–(BUSINESS WIRE)–(ビジネスワイヤ)– TANAKAホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:田苗 明)は本日、田中貴金属工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:田苗 明)がYBCO超電導線材(*1)向け配向Cu金属基板の専用製造ラインを構築し、2015年4月から量産体制を確立したことを発表しました。

田中貴金属工業は2008年10月、中部電力、鹿児島大学と共同で、超電導線材を用いた世界初の配向Cu金属基板を開発し、同年12月より生産・サンプル配布を開始しました。この超電導線材は、これまで配向金属基板の主要材料であったNi合金(ニッケルとタングステン合金)を、安価で配向性(※2)の高い銅に置き換えることで、50%以上のコスト削減を実現します。銅の弱点の一つは酸化されやすく、基板上に成膜した薄膜(超電導線材または酸化物バッファ層)が剥離する恐れがあることですが、パラジウムを酸素金属バリア層として添加した特殊なニッケルめっき液を使用することで配向性と表面平滑性を高め、基板上への薄膜の成膜安定性を向上させます。

田中貴金属工業では、配向Cu基板のサンプル出荷開始以来、成膜安定性の検証研究を続け、装置条件の最適化により長尺基板の生産も可能となった。国内外の需要に即応するため、2015年4月には自社工場内に専用ラインを構築した。今後は長距離・大容量の電力供給ケーブル、高磁場を必要とする磁気共鳴画像法(MRI)や核磁気共鳴法(NMR)、大型船舶用モーターなど、様々な分野への展開が期待されており、2020年には年間12億円の売上を目指している。

なお、この超電導線材を用いた基板は、2015年4月8日から10日まで東京ビッグサイトで開催された「第2回 高機能金属展」にサンプル展示され、好評を博しました。

※1 YBCO超伝導線材イットリウム、バリウム、銅、酸素を主成分とし、電気抵抗ゼロの超伝導材料を線材として加工したもの。

※2 配向性結晶の配向の均一性を示す指標。結晶を一定の間隔で並べることで、より高い超伝導特性が得られる。

超電導線材は、コイル状に巻くと強力な磁場を発生する特性を持ち、臨界温度(超電導状態を示す温度)によって分類されます。-196℃以下でも超電導状態を維持する「高温超電導線材」と、-250℃以下でも超電導状態を維持する「低温超電導線材」の2種類があります。MRI、NMR、リニアモーターカーなどに既に利用されている低温超電導線材に比べ、高温超電導線材は臨界電流密度(電流の大きさ)が高く、液体窒素で冷却することでコストが安く、外部磁場の影響を受けにくいなどの特徴があり、現在、開発が進められています。

高温超伝導線材には、ビスマス系(以下、Bi系)とイットリウム系(以下、Y系)があります。Bi系は銀パイプに充填し、線材として使用できる形状に加工したもので、Y系は結晶を配向させたテープ状に基板上に配置して線材として使用されます。Y系は特に高い臨界電流密度、強磁場特性を有し、銀使用量の削減による材料コストの低減も期待できることから、次世代の超伝導線材として期待されています。

Y系超伝導線材基板の特性と田中貴金属工業における技術開発

Y系超電導線材基板については、「IBAD基板」と「配向基板」の研究開発を行っています。超電導特性は金属結晶を一定間隔で並べることで高まるため、テープを構成する各層ごとに金属の配向処理が必要です。IBAD基板は、無配向の高強度金属上に酸化物薄膜層を特定方向に配向させ、その上にレーザーを用いて超電導層を設けることで強固な基板材料となりますが、設備や材料コストが課題となります。そこで田中貴金属工業は、配向性の高い銅を基板材料に用いることでコスト低減を図るとともに、配向に影響を与えないクラッド技術を用いた補強材層と組み合わせることで機械的強度も向上させています。

田中貴金属は1885年の創業以来、貴金属を核とした多様な事業を展開してまいりました。2010年4月1日には、田中ホールディングス株式会社を田中貴金属の持株会社(親会社)としてグループ再編を行いました。コーポレートガバナンスの強化に加え、効率的な経営と機動的な業務執行により、お客様へのサービス向上を目指します。田中貴金属は、専門企業としてグループ各社との連携のもと、多様な商品・サービスの提供に努めてまいります。

田中貴金属は、貴金属取扱量において国内トップクラスを誇り、長年にわたり産業用貴金属の開発・安定供給に加え、貴金属を活用したアクセサリーや貯蓄商品の提供にも取り組んでまいりました。貴金属のプロフェッショナルとして、今後も人々の豊かな暮らしに貢献してまいります。

[Press inquiries]Tanaka Kikinzoku International K.K. (TKI)Global Sales Dept.https://www.tanaka.co.jp/support/req/ks_contact_e/index.htmlorTANAKA KIKINZOKU KOGYO K.K.Akio Nakayasu, +81.463.35.51.70Senior Engineer, Section Chief & Assistant to DirectorHiratsuka Technical Centera-nakayasu@ml.tanaka.co.jp

田中貴金属は、YBCO超電導線材用配向Cu金属基板の専用生産ラインを構築し、2015年4月より量産体制を整えました。

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投稿日時: 2019年11月22日
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